残留農薬が心配。有機溶媒中に抽出された農薬からわかること

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スーパーには形の整った野菜や果物が並んでいます。キュウリは真っ直ぐで、葉物は虫食いなどしていません。せっかく買うのならキレイなものを選びたいですよね。しかし店頭に並ぶまでの過程を考えると、たくさんの農薬が使われているのです。

需要と供給を一致させるため、仕方のないことでしょうが、消費者が使用中止を求めれば農薬の使用量を減らせるかもしれません。

なぜ農薬が必要なのか

最近は家庭菜園やシェア農園で作物を育てる人が増えてきています。自家栽培の良いところは、何と言っても採れたて新鮮で、農薬を使わない安全さがポイントです。自分や家族が食するものに、わざわざ農薬をかける人はいないと思います。

虫が付くこともありますが、それは作物がおいしい証拠でですから、生命力のあるしっかりした味のある作物が収穫できることでしょう。どうしても気になるのなら、無農薬農薬を手作りする方法もあります。ところが、スーパーなどで販売されている野菜や果物には農薬が使用されているため、虫が付かずキレイなものばかりです。

そのような品物は好まれますし、形が悪かったり傷んでいるものは売れ残っていますよね。安定した生産量を確保するためには使用せざるを得ないのが現状かもしれません。私たち消費者の行動が農薬を使わせている原因だとすれば、ひとりひとりが意識して、考え直してみないといけませんね。

洗っても落ちない

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ほとんどの農薬は水に溶けやすい性質を持っています。土壌に撒いたり作物に噴射することで、根や茎から吸収され内部に浸透していきます。植物内を移動し、全体に農薬成分が回ったまま成長するため、農薬をたっぷり含んだ作物となります。

こうなるとどんなに一生懸命水洗いしても落とすことはできず、体に入った残留農薬は少しずつ蓄積されていきます。蓄積された残留農薬はゆっくりと時間をかけて害を及ぼし、症状となって現れます。できれば口に入る前からブロックしたいところです。

野菜の皮や根っこなども使う調理方法がありますが、農薬の害を考えるときちんと皮を剥くか、無農薬野菜を使用するほうが良いでしょう。

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輸入品に使われるポストハーベスト

ポストハーベストとは、収穫後に使用される農薬のことで、輸入品のほとんどにかけられています。特に柑橘系の果物に多く、船で運ばれる間に腐らないよう、防カビ剤がかけられています。この防カビ剤は果物の皮だけでなく、果実にも浸透して、わずかですが検出されたという結果があります。

この事実を知れば気持ち悪いと思ったり、農薬を散布している現場を見れば、食べられないかもしれませんね。日本では農薬としてではなく、添加物として認められていて、海外との基準が違っていたりします。国産品にも農薬は使用されていますが、ポストハーベストを考えると、まだ国産品のほうがマシではないでしょうか。

農薬たっぷり国産米

コメを栽培する際、農家さんは害虫に苦労するといいます。

今や幻となった「ササニシキ」も、害虫に弱く手間ひまかかることから、ほかの品種に切り替えていく農家さんが多かったそうです。しかし、日本の主食であるコメを絶やすわけにはいかないと、水田には多くの農薬が投入されました。

その結果、害虫を退治することができ、新しい品種も続々と誕生しました。日本全国のご当地ブランド米もあったり、海外からも美味しいと評判ですよね。ところが使用された農薬には、子宮や卵巣に悪影響を与えるものがあったり、肝臓に負担をかけたりと様々な薬害があります。

国の残留農薬検査では、コメから3種類の農薬が検出されていて、毎日食べることを考えるととても危険です。特に玄米は白米と違って残留農薬接種率が高くなるので、注意が必要です。

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子供や胎児が危ない

農薬の代表的なものにネオニコチノイド系農薬があります。脳や神経に支障をきたし、多くの健康被害を引き起こします。他にも頭痛やめまい、記憶障害など、その影響を大きく受けるのは体の小さな子供たちです。また妊婦が残留農薬のある食品を摂取した場合、胎児に移行することもわかっていて、発達障害児の増加が問題になっています。

最近落ち着きがなく、キレやすい子供たちが多くなっています。残留農薬や添加物を摂取しすぎではないかと指摘されていますが、それに対する規制や対応はあまりされていません。子供たちを守るため、市民団体や消費者団体が農薬の使用中止や規制を訴え続ける活動をしています。

日本の基準はかなり緩い

農薬が引き起こす人や自然への危険性が明らかになるにつれ、海外では使用を厳しく制限したり、使用中止に踏み切ったりする動きが起きています。真っ先に動いたのは、消費者の権利や保護に敏感なEUで、数種類の農薬を使用禁止にしています。

続いて他のヨーロッパ諸国やアメリカなど、徐々に規制を設ける国が増えてきています。日本では2014年に妊娠期間限定の摂取許容量を設定する制度が作られました。環境ホルモン作用に注目して、妊娠中の胎児への影響を考慮したものですが、複数の環境ホルモン作用のある農薬の複合作用は想定されていないといいます。

現在の残留基準設定の制度では、妊婦も胎児も守られることはありません。また、農薬によるミツバチ大量死で農作物の不作を防ぐため、巣箱を移動させるなどの措置を取りますが、農薬自体の規制は行われれていません。これでは根本解決にならず、養蜂家や農家の人たちは守られていません。

残留農薬を調べる方法

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残留農薬試験法といって、作物の中にどれだけの農薬が残留しているかを調べる方法があります。主に、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーという機器を用いて分析します。手順としては、初めに農薬が抽出しやすいように対象作物を粉砕しておきます。

そこに有機溶媒を入れて沸騰し、有機溶媒中に農薬を抽出します。そして、抽出された農薬とそれ以外の物質を分離し、農薬だけを精製・濃縮します。分析された農薬は標準物質を用いて農薬量を算出し、作物体中濃度を調べます。

そこから限界濃度や複合的な害が見えてくるので、規制を設ける際の基準になったりします。このような方法は分析センターで行われていて、専門的な技術と設備が必要です。個人でもお願いすれば調べてもらえるようですが、かなりの費用がかかるため現実的ではありません。

ここで分析された結果が公表されれば、その情報に耳を傾け、知る努力をすることが大切ではないでしょうか。今はインターネットから色々な情報を得ることができます。どれが正しいものなのか見極めが重要ですが、その行動が家族や自分の体を守り、環境保護にもつながることでしょう。